Diary

蝉の声に、ふと立ち止まる

道を歩いていたら、どこからか蝉の声が聞こえてきました。
まだ梅雨も明けていないのに、もう夏が来たような音。

一瞬、「ああ、今年もこの季節が来たな」と思って、足が止まりました。
特別なことがあったわけではないのに、その一声だけで時間が巻き戻されるような不思議な感覚。
蝉の声って、記憶を引っ張り出す力があるんでしょうか。

気がついたら、数年前の夏のことを思い出していました。
誰と何を話したとか、何を食べたとか、そういう細かいことじゃなくて、
ただ、そのときの空気や陽ざしの感じ。

思い出すことって、供養に似ているのかもしれません。
過去に戻るのではなく、今ここで“確かにあった”と感じること。

足元のアスファルトが熱を持っていて、じっとり汗をかくような午後でしたが、
胸の中は少しだけ、涼しい風が通ったような気がしました。

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